■Ishida, Hiroshi, Spilerman, Seymour, and Su, Kuo-Hsien, 1997, "Educational Credentials and Promotion Chances in Japanese and American Organizations," American Sociological Review, 62(6): 866-82.

■Sakamoto, Arthur and Powers, Daniel A., 1995, "Education and the Dual Labor Market for Japanese Men," American Sociological Review, 60(2): 222-46.

■Yasuda, Saburo, 1964, "A Methodological Inquiry into Social Mobility," American Sociological Review, 29(1): 16-23.


Ishidaほか論文は、洗練された問いの立て方、問いと分析の一致、分析結果からの理論的な知見の導出と、改めてすごい論文だと認識した。いくつかの仮説の検証が行われているが、知見の一つは日米の企業で、出身大学名を統制した上でも「大学の質」(日本では入学偏差値、アメリカではSAT得点)が昇進に有意な影響を与えていることを明らかにしているということ。これより、学閥のようなコネが昇進に有利さをもたらしていることが否定される。
さらに、大学の質は下位の職階における昇進ではなく、上位の職階(日本では課長から部長)への昇進に影響している。入社から20年以上も経過してなお、偏差値で測られるような大学の質が昇進可能性に影響を与えているのは、シグナリング理論が予測するようなシグナルとして用いられているとは考えがたい。なぜなら、入社からそれだけ経過していれば、被雇用者の能力を測るもっと優れた方法が存在するはずだからである。よって、大学の質が影響を与えているということは、選抜度の高い大学の卒業生は、より高い認知的・非認知的能力を有していると考えられる、と結論づけられる。

この論文の優れたディスカッションの特徴は、分析の結果から「こういうように考えられるかもしれない」というような曖昧な記述ではなく、「細かい分析の結果、他の可能性は排除され、こういう可能性しか考えられない」という文体であること。