今日赤門前で、
http://mutokyo.blog57.fc2.com/
という人たちが東大社研・人材フォーラムのアンケートに対して抗議をしていた。
アンケートの概要は
http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/jinzai/output4.htm
ビラを見ると、主たる抗議の内容は、政府の派遣法改正法案は製造業務での登録型派遣は禁止する一方、常用型派遣は存続するものであるにもかかわらず、質問紙では「もし今後、労働者派遣法が改正されて製造業務で派遣社員として働くことができなくなったとしたら、あなたが失業する可能性はどの程度あると思いますか。」と(上記概要だと図表6)、製造業派遣を全面的に禁止する印象を与えるような聞き方をしており、登録型派遣を禁止し、常用型派遣に誘導することを意図している派遣法改正法案とは全く異なる内容についてこの質問は尋ねているとのこと。
佐藤博樹先生がそのあたりの区別を分かっていないはずはないので、何かしらの意図があって区別して聞かなかったのだと思う。
その意図は分からないが、ただ上記の質問文は「現在派遣社員として働いており、派遣法が改正されて、登録型派遣で働くことができなくなり、かつ常用型派遣にも切り替えられなかった場合」を聞いているようにとることはできる。その人たちの過半数が改正に反対しているということは、やはり見逃せないことだと思う。
そもそも、仮に登録型派遣は禁止し、常用型派遣を存続するという聞き方をして、賛成/反対の比率がそんなに変わったのだろうか? 上記概要の図表7の「禁止に反対する理由」で、約7割が「派遣を禁止しても、正社員などの雇用機会が増えないから」(太線引用者)と回答していることを見ると、常用型派遣に切り替えられるという見込みもあまり持っていないように思えるのだが。改正法案における派遣労働者の無期雇用への転換は派遣元企業の努力義務であるわけだし。また、上記の図表9と10に関しても、常用型と登録型の区別をしなかっただけで、これだけ失業の見込みの差が開くとは説明しがたい。
登録型派遣の禁止しさえすれば安定した雇用のパイが増えるとは限らないことを派遣労働者自身が感じているかもしれないにもかかわらず、この抗議はそれを隠蔽したいように見えてならない。今日の抗議に関わっていた労働組合は本当に派遣労働者の利益を代表しているのだろうか。
もう一つ。抗議のビラにおいて「中立的な調査結果ではない」という文面があるが、そもそも社会調査が中立的だというのが多くの人が持っている幻想だ。社会調査が調査主体の何らかの仮説を検証するために行うものであり、佐藤博樹先生は(というか多くの経済学者も)派遣法の改正に反対しているのだから、そうした観点からの設計がなされるのはある程度は当然。もちろんワーディングなどは細心の注意をもって設計されるべきだし、今回のアンケートはその点の問題があったのかもしれないけれども。