三島由紀夫『潮騒』


潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)

知多半島の付近にある小さな漁村での物語である。
時代の設定は戦後まもなくで、村の描かれ方には前近代的な伝統や習慣が強く残っていることが見て取れる。

例えば豊漁や荒天に際し、神への信仰が熱心であること。逸脱行為を行う成員に対しては厳しい制裁を行うことなどだ。

また、恋愛に関してもまだまだ自由とは言えない社会が描かれている。山田昌弘が『少子社会日本』の中で「婚前交渉って何ですか?」と尋ねる最近の学生に驚いたというようなことを書いていたが、今では通じない時代や地域の理念型が表現されているといってもいいだろう。