Kundzewicz and Koutsoyiannis (2005) "Editorial—The Peer-review System: Prospects and Challenges"

Kundzewicz, Zbigniew W. and Demetris Koutsoyiannis. 2005. "Editorial—The Peer-review System: Prospects and Challenges." Hydrological Sciences Journal 50: 577-90.

 

 ピアレビューの仕組みとして、(1)blind、(2)half-blind、(3)openという、3つの仕組みが区別されています。blindは著者と査読者が相互に匿名の関係にあり、編集者しか名前はわからないというもので、openは逆に著者と査読者が相互に相手が誰か分かる状況で査読が行われるというものです。half-blindは、査読者は著者が誰か分かるものの、著者は査読者が誰かわからない非対称な仕組みとのことです。

 まったく知らなかったのですが、本論文のようにhalf-blindが圧倒的に多い分野もあるのですね。このデメリットとしては、著者が有名な大学に所属しているかどうかや、すでに業績を出しているかどうかという、論文の内容とは無関係な要素が、査読の質や結果に影響する可能性があることです。ではなぜblindにしないのかというと、コストの問題が挙げられています。

 投稿原稿から、単に著者の名前や所属先を削除するだけでは十分ではなく、論文のテーマや引用している文献から著者が実質的に分かることがあるため、blindの仕組みを徹底するのは難しいとのことです。実際、査読者に対するある調査によると、42%の事例において著者が誰かを正しく特定できていたとされています(一方で別の研究によると、逆に著者が査読者を正しく特定できる割合は、わずか6%)。

 half-blindの問題点を解決するために、openの方向に変えることもできると主張されます。査読者の名前を公開することによって、査読の質や結果に影響は見られないとする、実験の結果もあるそうです。つまり、著者が有名な研究者であることによって、査読者が萎縮して基準を緩めるというようなことは、必ずしもあるとは言えないということになります。しかしそもそも、署名入りの査読を引き受けたいという研究者は多くなく、匿名の査読でさえ査読者を確保するのが難しい状況の下では、広く定着させるのは難しいかもしれないという問題点が挙げられています。