話題になったので観ておくかと思い、やっと。
面白かった。見せ方をよく練ってつくられている映画だと思う。
序盤にイルカの愛らしい姿や、知能の高さの印象が与えていることが、ラストの血に染まった海(映像処理しているのではないかと、いささか怪しいくらい赤い)の残酷さを倍加させている。
さらに、地元の住民やIWCの日本代表があたかも悪の根源であるかのように見えてしまうし、立ち入り禁止の区域に侵入するための様々な試みは、一種の冒険活劇の楽しさを与えている。
恣意的な見せ方に、プロパガンダだと批判があるようだが、そもそもドキュメンタリーはありのままの世界を撮るものではない。ドキュメンタリーとプロパガンダの線引きは必ずしもできない。
もっとも全く事実に基づかない描写は問題だし、個人的な好みを言えばリック・オバリーが前面に出すぎな気がして、もっと違った視点から構成してもよいのではないかと思った。すなわち、リック・オバリーの活躍でエンターテイメントとしてよく出来すぎているので、反捕鯨の映画ならばもっとプロパガンダらしくあるべき。
本作が「反日的」だという批判もよく考えた方がよい。作品の中の日本人へのインタビューにもある通り、多くの人はイルカが年間23,000頭殺され、またその一部の肉が食べられているという事実をそもそも知らなかったわけなのだから、反日的も伝統的な食文化もない。
やはり公開されたから色々言えるわけで、上映中止に踏み切った劇場があったことは残念。