フョードル・ドストエフスキー『永遠の夫』

永遠の夫 (新潮文庫 (ト-1-6))

永遠の夫 (新潮文庫 (ト-1-6))

ドストエフスキーの長編は、異常な精神を持った人物や、神のような慈愛を持った人物が活躍するが、本作のトルソーツキイのような平凡な人物が中心になることはあまりないのではないかと思った。ただ、その平凡な人物の中にひそむ、虚栄に満ちた傲慢な精神を仔細に描写されているのは、やはりこの作家の小説だと感じる。

しかし、そのトルソーツキイは、亡妻と主人公ヴェリチャーニノフの不貞を9年前に知りながら、なぜ最後まで言い出さなかったのか、また再会してからだいぶ経過した晩になって突発的にヴェリチャーニノフを殺害しようと思い立ったのかなど、理由がよく分からないことも少なからずあった。


これで『死の家の記録』を除いて、文庫で出版されている中・長編は読了。
だいぶ前に読んだものも多いので読み返したい。『地下室の手記』、『白痴』、『悪霊』くらいの順番で。