山尾志桜里(2018)『立憲的改憲――憲法をリベラルに考える7つの対論』

 

立憲的改憲 (ちくま新書)

立憲的改憲 (ちくま新書)

 

 

 「統治権力を主権者の手によって縛る」という憲法本来の機能に立脚した「立憲的改憲」という著者の立場を、7人の専門家との対談から展開しています。7人目の対談者である駒村先生が討論者のセミナーに先日参加する機会があったので、自分にとってはタイムリーな本でした。目下起こりそうな憲法改正の動きを考える上で、必要な論点はおおむねすべて出ていそう、といっても過言ではないかもしれないくらい厚みのある対談集になっています。

 議論をわかりやすくするために、(1)「個別的自衛権に限るか、集団的自衛権を許容するか」、(2)「9条2項と自衛隊の矛盾を解消するか、放置するか」という2つの軸から、「立憲的改憲」の他に、「安倍加憲」、「石破9条2項削除案」、「護憲」という4つの選択肢が挙げられています。石破議員の提案は集団的自衛権を許容する点では対立するものの、9条2項と自衛隊の矛盾を解消しようという姿勢は明確であり、「何も変わらない」と強調する安倍加憲案よりも誠実であると評価されています。石破議員の著書とあわせると、より理解が進みますね。

 いくつか重要だと思った論点をメモしてみます。

  • 改憲」という言葉が右派と結び付けられてきた戦後日本の不幸、9条さえ守れば日本の安全保障が可能になると信奉してきた護憲派の欺瞞
  • 憲法典の改正のみならず、日本の将来的な安全保障の構想、特に日米地位協定の問題をいかに考えるか
  • 現状の司法が統治行為論に基づいて違憲判断に消極的であることから、憲法裁判所の設立が求められるかどうか
  • 多数派の意思を反映させる仕組みである民主主義と、多数決によっても侵害できない普遍的な権利を擁護する立憲主義のバランス
  • 選挙以外に一般市民が政治に声を届ける手段が限られているという日本の制度的特徴
  • 「立憲的改憲」の目的を達成するために、憲法典の改正は真に必要なのか、それとも通常立法の範囲内で可能なのか