- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/02/18
- メディア: 新書
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金融は難しい、といつまでも言っているだけなのはよくないので少しは本を読む。
第一章 円高はなぜ起きるのか
第二章 デフレは円高を生む
第三章 デフレと円高はなぜ悪いのか
第四章 構造デフレ説の誤謬
第五章 デフレは貨幣的現象である
第六章 日銀の金融政策の目的は「デフレの安定化」
第七章 インフレ目標でデフレも円高も止められる
本書の主な主張は、政府がインフレ・ターゲットを設定することで日銀に政策目標を課し、人々の間にマイルドなインフレ予想の形成を促すことで、デフレと超円高から脱却させること。
構造デフレ説―中国などの発展途上国・新興国からの安値品がデフレを起こしている、中抜き(小売店が問屋を仲介しないことの)がデフレを起こしている、ITの発達や流通革命などの生産性の発達がデフレを起こしている、不良債権を抱えた銀行の貸し渋りがデフレの原因である、生産年齢の人口がデフレの原因である―などをすべて理論的にも実証的にも否定し、デフレはあくまで貨幣的現象であると述べられる。
ただし、ここで言う貨幣的現象とは、貨幣が増えればそれに比例して物価が上がるという「単純な貨幣数量説」ではなく、「中央銀行が採用する金融政策のスタンスが、人々の将来の貨幣供給の経路とインフレに関する予想形成に影響を及ぼすことによって金融政策の効果が発揮される」ということ。
こうした説が日本においても実証的に確かめられること(2004年3月から2006年2月の量的緩和期においては、マネタリー・ベースの増加に伴い、予想インフレ率も微増していた)や、インフレ目標を設定している国ではバブルに陥ることなく安定したインフレ率の増加を達成し、平均成長率も高いことなどが示される。
しかし、日本においては日銀がバブルのトラウマから、デフレを許容しているという。また、1998年から施行された改正日銀法では、日銀に政策目標・手段両方の政府からの自律を認めてしまい、政府がインフレ目標を設定できない状態になってしまっているという。このために、再度の日銀法の改正が主張される。
いわゆるリフレ派による主張であり、普段触れている日経新聞的な構造改革・規制緩和路線とはかなり異なった議論が展開されており(著者はそうした二分法を必ずしも意味のあるものとは思っていないようだが)、一見すると本当なのかと疑ってしまうような内容もあった。しかし、インフレを中期的に維持することで名目成長率が上がり、財政収支を改善することができるという主張や、もし金融政策でデフレを脱却することができないのであれば、日銀がどれほど長期国債を購入してもインフレにならないという主張など、よく考えると説得される内容ばかりだった。