サンドウィッチマン(2018)『復活力』

 

復活力 (幻冬舎文庫)

復活力 (幻冬舎文庫)

 

 

伊達 もう思い出したくないし、映像も見たくないって人は少なくない。それはそれで仕方ないと思う。だけど僕たちは、表に立ってきちんと声を出して、あの大震災を伝えていこうと決めた。「人を笑わせる芸人が、そんなことしていいのか?」っていう迷いは、僕はまったくなかった。迷うとか以前の問題だった。宮城の人間だし、動かないわけにはいかないだろ! っていう方が大きかったな。

富澤 僕はちょっとだけ、考えた。『東北魂』で募金活動をしたり、大震災の悲劇を伝えたりする役目をしていくなかで、「ダメかもな」という覚悟はしていた。

伊達 ダメって?

富澤 お笑いとして、これから先のこと、ね。一般の人から、お笑い芸人が何やってんの? という批判は、必ずあると思ってたし。でも結局は、伊達と同じだった。ここで動かなくて、どうするんだという気持ちだった。心のどこかで、「お笑い芸人として3年ぐらい、いい思いできたから、この先干されてもいいや」って思ってた。

 

 仙台駅構内の本屋で購入しました。移動中にさっくりと読み進めて、2日間で読了です。ちなみに本書の横には、『サンドウィッチマンの週刊ラジオジャンプ』が陳列されており、こちらは面白そうな回を立ち読みしました。

 もともと2008年に出版された、『敗者復活』に加筆して文庫化されたものとことです。高校時代の出会い、コンビ結成からの苦節期間を経て、2007年のM-1グランプリで敗者復活から優勝するまでの過程が、二人それぞれの視点から描かれています。文庫版あとがきは、10年を経てからの当時の振り返りや、今後の展望をインタビューするという内容に。

  自分はお笑い業界には疎くあまりテレビも見ないので、東北のPRや東日本大震災の復興支援を通じて、このコンビの活動を知るというのがもっぱらでした(最近になって特に有名なネタはフォローするようにしました)。よって本書を通じて知った事実が大部分を占めましたが、非常に面白く読めました。特に、一見するとクールに見える富澤さんが、お笑いやコンビの将来について熱い想いを綴る箇所や、相方への信頼を語る箇所は、ぐっと来るものがありますね。