Lareau, Annette. 2012. "Using the Terms Hypothesis and Variable for Qualitative Work: A Critical Reflection." Journal of Marriage and Family 74(4): 671-77.
Goertz & Mahoneyと同様に、Lareauも定量的・定性的研究という「2つの文化」の存在を支持する立場であるようです。ただし、Goertz & Mahoneyはどちらの研究においても、すでに因果に関わる何らかの仮説があることを前提にしているように見えるのに対して、Lareauは研究のデザインやプロセスにおける2つの文化の違いを強調し、「仮説」、「変数」という用語を定性的研究で使うことに対して疑問を述べている点が特徴的です。
さらに、定性的研究の中でも参与観察なのか、インタビューのみでデータを集めるのか、インタビューではどの程度の人数を対象とするのかという区別を提示しており、勉強になりました。
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仮説とは、研究が始まる前に作られるものだと多くの研究者がみなしている;さらに理想的には、研究結果によって仮説を変えるべきではないと考えられている
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変数とは一般的に、明確に定義されかつ測定が容易であるような相互に排他的な値を持つものとみなされる
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つまるところ、定性的研究の目標の一つは出来事の意味やそれらの相互連関の性質を示すことである;出来事の頻度ではなく、人々ができごとをどのように解釈しているかを知りたいのである
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定量的研究者は、変数間の関連は実証的に示されない限りは独立したものとみなすものの、定性的研究者は社会生活の要素が相互に連関したものとみなす
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定性的研究では、「仮説」の提示よりも「リサーチ・クエスチョン」の洗練化、「変数」よりも「日常生活における社会的プロセス」を研究すべきである
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リサーチ・クエスチョンは特定の変数に限定されるものではなく、いくらかオープン・エンドなものであるべきである
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定量的研究と同様に、定性的研究においても反実仮想を考えたり、不利な証拠を探したりすることは役立つ;Unequal Childhoods(Lareau 2011)においては、もし階級というものが子育てにおいて重要でなければ、何が見出されるだろうかということをしばしば自らに問うた;言い方を変えれば、自らのデータを間違って解釈している可能性を考えたのである
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定性的研究者は、リサーチ・クエスチョンを研究のプロセスの中で発現させ、成長させ、発展させ、変化させるべきなのである
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定性的なデータ収集の方法として、参与観察によるものとインタビューのみによるものとの区別は重要である
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150人や200人を対象とした大規模のインタビュー調査を行う研究が増えているものの、こうした研究では筆頭研究者のデータ収集への関与が犠牲になってしまうことが多い
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大規模のインタビューではしばしば回答の意味よりも回答の頻度に焦点があてられており、このことは定性的研究の価値を損なうものである
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参与観察とインタビュー調査は非常に異なったアプローチである;インタビュー調査は人々の経験の意味を理解することに焦点をあてるものの、「エスノグラフィー的」と呼ぶのは誤りであり、参与観察における豊富で自然な観察を詳細に与えてくれるものではない
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インタビューはまた、対象者が研究者の望んでいることを答えてしまうという社会的な望ましさ(social desirability)の問題によって、不正確なデータになることへの脆弱性がある
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エスノグラフィーの目的は、日常生活に関する豊富できめの細かい分析を行い、理論の発展をもたらすことである;この目的のためには50以上のインタビューを行う必要はなく、そもそも50以上のインタビューの結果を提示するのは困難である