橋本健二『階級社会―現代日本の格差を問う』

階級社会 (講談社選書メチエ)

階級社会 (講談社選書メチエ)

階級・階層研究の中でも独自な視点に立つ著者だが、社会学理論に立脚した実証研究を行うという姿勢はとても見習うべきところがあると思う。

ということで理論に多く紙幅が割かれていると思いきや、東京論や大衆文化論が展開されていた。まあどうせ他の著作も読むのでよいのだけれど。

刊行時点では分析可能な最新データが示されているのはよい。JGSSでも結構いろんなことができると分かった。

最後の章の教育(社会)学批判は、根拠が弱く、まったく批判になっていないのでなくてよかったと思う。学校効果研究や職業教育に不平等の是正効果がほとんどないことを仮定して、もともとの階級構造に目を向けるのが本質的な問題としているわけだが、仮定の部分についてせめてもう少しレビューされていないと。