Card and Krueger (1994) "Minimum Wages and Employment: A Case Study of the Fast-Food Industry in New Jersey and Pennsylvania"

Card, David. and Alan B. Krueger. 1994. "Minimum Wages and Employment: A Case Study of the Fast-Food Industry in New Jersey and Pennsylvania." American Economic Review 84: 772-93.

 

 最低賃金の教科書的なモデルにおける中心的な予測とは異なるものの、パネルデータを用いて最低賃金の変化による影響を受けた市場・雇用主であるかどうかの比較を行った近年の多くの研究と一致して、ニュージャージー州における最低賃金の上昇はファーストフード・レストランの雇用を減少させたという証拠は見出されない。最低賃金5.05ドルへの影響を受けたニュージャージー州の店舗を、ペンシルベニア州東部の店舗(最低賃金は時給4.25ドルで一定)と比較しても、もともと時給5.00ドル以上の賃金であった(よって法律の変更による影響をほとんど受けない)ニュージャージー州の店舗と比較しても、最低賃金の上昇は雇用を増加させたのである。この結論の頑健性を証明するために、様々な別の特定化の仕方を提示した。いずれの特定化によっても、雇用に対する負の効果は見られなかった。さらに、最低賃金が上昇した後の年において、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、ニューヨーク州の間で、ファーストフード産業で働く未成年者の雇用の変化も検証した。結果は同様にして、ニュージャージー州では低賃金労働の雇用が相対的に増加しているというものであった。くわえて、最低賃金の上昇がマクドナルドの直営店の数に対する負の効果があるという証拠も見出されなかった。
 最後に、ニュージャージー州ではペンシルベニア州よりもファーストフードの食事価格が上昇したことが示された。つまり、最低賃金の上昇による負担のほとんどは、消費者に転嫁されたのである。しかしながら、ニュージャージー州の中では、最低賃金の上昇の影響をもっとも受けた店舗において、より価格が上昇したという証拠は得られなかった。全体として、これらの知見は標準的な競争モデル、あるいは雇用主が供給制約に直面しているというモデル(例えば、需要独占や均衡サーチモデル)による説明が困難なものである。

[pp. 791-2]

 

 差分の差分法(difference in differences)を使うかもしれないので、ちょっと勉強しています。教科書的な事例としてよくこの論文が引用されるので、読みました。

 事業所レベルのデータではよく使われるのかもしれませんが、「フルタイム等価雇用」(full-time equivalent employment)というのが従属変数になっています。各事業所において、フルタイム労働者を1とし、パートタイム労働者を0.5とするものです。頑健性の確認のために、後の分析ではパートタイムに対するウェイトを0.4と0.6に変えるという手続きも行われています。

 全体として、頑健性の確認が神経質なほどに行われているという印象ですが、これでも因果効果を測定しているかどうかにはいろいろと批判が行われたというのは驚きます。批判に対するリプライ論文もあるようなので、読んでみたいと思います。