Möhring(2021)「国家間分析におけるマルチレベルモデルの代用としての固定効果アプローチ」

Möhring, Katja. 2021. "The Fixed Effects Approach as Alternative to Multilevel Models for Cross-national Analyses." SocArXiv. February 22. doi:10.31235/osf.io/3xw7v.

 

 パネルデータ分析の場合とくらべて、国家間のクロスセクション分析においては固定効果モデルはあまり使われないけれども、実際には有用だという論文です。ISSPを使用した再分配の支持が事例として示されており、そこでは固定効果かランダム効果かで実質的な結果の違いはありませんが、固定効果モデルも検証することで頑健性を確認する手段になるとのことです。

 

  • もともとマルチレベルモデルは教育研究の分野で生まれたものだが、そこで分析される生徒が学級・学校にネストされているデータとは異なり、異なる国家の中に個人が含まれるデータの場合には、レベル2である国はランダムサンプリングとはならない
  • 国際比較調査に含まれる国の数は11~31程度であることが多く、推定されるモデルの国レベルの自由度は小さくなる
  • Van der Meer et al.(2001)によれば、国レベルの係数推定値は、少数のはずれ値によって信頼のできないものになりやすい
  • マルチレベルモデルにおいては、マクロレベルの独立変数のみならず、ランダム効果の推定も国レベルの自由度に依存する
  • 研究者は通常、1つまたはごく少数のマクロレベル独立変数を入れるか、異なるマクロレベル変数を逐次的に検証している
  • 固定効果モデルであれば、国に固有の誤差項がモデルにおける他のすべての変数と独立であるという強い仮定に依存しない
  • 固定効果モデルにおいては、マクロレベル変数の調節効果(moderator effects)はクロスレベル交互作用によって推定できる
  • 固定効果モデルは一般的に、マルチベルモデルの結果の頑健性を検証する上で有用である