『パリ20区、僕たちのクラス』

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久々に岩波ホールへ。前に『子供の情景』を観た時はがら空きだったが、今回は権威ある賞を取っていることもあってか、人が多かった。

パリ20区にある中学校にて、国語教師を主人公にした映画。人種、移民が多様な学校が舞台であることが特徴になっている。

いかに多様な背景を持つ子どもたちを包摂するかという、教育のみならず現代社会の重要なテーマが描かれていると読み取った。主人公のフランソワは新しいクラスで自己紹介文書かせたり、ディベートを行わせたりと、言葉によって異質な他者を受け入れることを目的の一つとしているのだろう、独特の授業を行う。また、「問題のある生徒」に手を焼きつつも根気よく対応する。しかし、変化が見られる生徒もいるものの、必ずしもフランソワの教育はうまくゆかない。心を閉ざしている生徒に、「将来後悔するぞ」と言っても上滑りしているように聞こえるし、素行不良で結局退学を余儀なくさせられる生徒も出てくる。理念の上では「他者への理解」と言うことは簡単でも、現実にはどれほど困難かということが映像で以て示される。くわえて、教師の仕事は熟練を要するものであり、また規律や教師の権威というものはどうしても必要なのだということも考えさせられる。

また、日本の学校制度との違いに少なからず気づかされる。特に目につくのは、成績判定会議への生徒代表の参加だった。特にこの生徒たちが会議で積極的な発言をしているわけではないが(むしろその後にクラスで先生の失言をばらしている)、学校は生徒も含めた構成員によって運営されるべきという思想が、普通の学校にも見られるというわけだ。

それから、フィクションであるにもかかわらず、ドキュメンタリーのような印象を抱かせるような仕上がりになっているのが素晴らしい。
どの生徒も中学生にしては大人っぽすぎる気もするが、とても生き生きとした演技をしている。