鈴木大拙『禅』

禅 (ちくま文庫)

禅 (ちくま文庫)

1年半くらい前に購入してそのままだった。


・禅はインドの哲学思想に源を発し、中国で発達した。
・禅は抽象的な形而上学的思索に関心がなく、経験主義的である。これは「問答」の形に表れている。
・禅は学説を立てたり、説教をしたりしない。自分の中から出てきた問いに対する答えは、自分自身の中に見つけ出せと言う。
・中国人が仏教を”悟り”の教えとして捉えた時、その具体的な心の方向性が禅に至った。”悟り”の体験が重要であるのは、自らを「他力」の教えと称する浄土門においても同じ。
・禅の哲学によると、人間は二元論的な思考の虜になっている。問いを発する者は、自己を実在から引き離した際にはじめて問うことが可能になる。問いを発する際に自己をそこから引き離すために苦悩が生じる。問いを解くとはそれと一つになることだとされる。
・禅は自分一人を高く持して大衆から遊離しているとされる。これはある程度正しいが、悟りの体験は必ずしも社会の役に立とうとする意欲を失わせるわけではない。「市場は人が社会に奉仕するところであるが、他方、山の隠れ家は、人が公共の仕事に役立つよう自己を鍛えるところである。」