東電株主42人が代表訴訟、経営陣に5.5兆円損賠請求

東電に対しては交付金は前払いで払われるわけですよ。ところが損害賠償請求者に対しては3ヶ月の後払いで払われるわけですよ。こんな馬鹿な話がありますか。」
東電は一銭も今まで出していません。損害賠償金を。全部税金です。こんなことがあっていいんですか。」


経済ジャーナリストの町田徹などが指摘しているように,政府が策定した東電の賠償スキームには大きな問題があったのではないかと思わざるを得ない。東電がその保有する資産からどれくらいを賠償にあてることができるかを詳しく検討することなく,税金および金融機関からの融資を入れ,またこれまで通りに電力料金の値上げも可能であるという,現状の体制を存続させるためと思われても仕方がない政策が採られてしまった。


これまで原発の停止を求めた訴訟については,原告の主張が認められたことは地裁・高裁で2度しかなく,いずれもその後の上級審で覆されているという。原発の高度な専門的技術性を理由に,国や電力会社に口を挟むことはしてこなかったわけだ。すなわち,司法が行政を監視することができていなかったという言い方もできるわけであるが,今回の事故が起きた後で,何か変化は起きるのだろうか。その判断に注目がされる。


しかし,「経営者個人の責任を追及しなければ会社の体質は変わらない。裁判を通じて原発業界の集団無責任体制を是正したい」という原告の姿勢には問題があるかもしれない。というのも,JR西日本福知山線脱線事故の訴訟にも見られたように,現在日本では司法取引の仕組みがないため,企業などの組織が起こした事故について個人の責任を追求することによって,その被告は自らに不利な証言は当然しなくなるため,原因究明と再発防止に対してマイナスの影響が及ぶ可能性があるためである。