2ヶ月くらい前から少しずつ読み進めて、ようやく読了しました。私たちの日常生活に起きた、「きわめてありえそうにないこと」が実際には十分に起こりえることが、統計学の知識をもとにして独自の概念を導入し、説明されてゆきます。「松原望先生も推薦」の帯がついていました。
- 「不可避の法則」―可能な結果それぞれの起こる確率は小さくとも、そのうちのどれか一つは必ず起こる。
- 「超大数の法則」―試行回数を十分に多くすれば、一回一回は起こりそうにない事象も起こりやすくなる。
- 「選択の法則」―事象が起こった後から選ぶことによって、確率は好きなだけ高くできる。例として、的に矢が当たる確率は、矢が「ささった後から」的を描くことによって確実なものとすることができる。
- 「確率てこの法則」―確率分布のわずかな変化が、きわめて異なる結果をもたらすことがある。例えば、正規分布とコーシー分布の形状は一見するとそこまで違わないが、平均から離れた事象の起こる確率は大きく異る。
- 「近いは同じの法則」―十分に似ている事象は同じと見なすことができる。この「似ている」の範囲を緩めることで、偶然に見える事象がより起こりやすくすることができる。
言われてみればその通りという事例が多いのですが、著者も指摘するように、しばしば私たちは身の回りの事象の確率を誤って見積もっているために、「偶然」や「奇跡」と見なしてしまいます。これが誕生日や宝くじの当選などであれば、あまり害がありませんが、司法判断や治験の場では大きな問題になりえます(実際に起きてしまった問題も紹介されています)。いわゆる「統計リテラシー」というものを考える際に、非常にためになる(そして同時に面白い)本でした。