今季で現役引退を発表している横浜の三浦大輔投手が、自らの経験や練習の心構え、ファンへの思いなどを綴った作品です。
どの分野でも一流の人が書いたものは面白いですね。ただし、実績は一流でも、もともとは無名校出身・ドラフト下位指名で、きわだった身体能力もなく、いかに努力で補ってきたかということが繰り返し強調されています。
努力を重ねるということに関して、やはり人間は環境に影響されやすいところがあると思います。周囲のモチベーションは高い方が自分にもよいし、実際そういった目的のために環境を変える人もいます。この本が書かれた2012年時点では、横浜は5年連続リーグ最下位にあり、そうした中でも誰よりも練習に励んできたという、三浦選手の姿勢は驚異的なものに感じられます。
ただし、自身も心が揺れたことがあるのは認めており、2008年にFA宣言をして、阪神に移籍する直前まで行きつつも、結果として残留を決断した際のことにも触れられています。
「そうだ、俺は弱いチームを強くして、みんなで優勝を味わいたいんだ」
[p.51]
いちいち表現がかっこいいですね。
また、特に印象的な箇所を挙げるとすれば、次のあたりでしょうか。
自分は練習が大嫌いだ。はっきりいって、やっていても何の面白味も感じない。それは、ベイスターズ選手会で行っている小学校訪問授業の際には子どもたちにもはっきりと言っている。
「自分は練習が大嫌いです。やらなくてもいいと言われれば、正直やりたくありません。だって、しんどいですから」と。
これだけで終わってしまえば、ただの愚痴になる。だから、こうも付け加える。
「ただし、練習をしなくてプロ野球選手になった人はいないし、一流選手になれた人もいない。自分が『うまくなりたい』と強く思っているんだったら、しんどくても練習をするしかない。試合で負けたら悔しい。じゃあ、『悔しいから次は絶対に勝ちたい!』と誰よりも思っていたとしても、気持ちだけで勝てるなら世の中の多くの人が勝者になれる。現実はそれだけでは勝てない。勝つためにはどうするか? うまくなるためにはどうするか? 練習しなければならないんだ」
[pp.156-7]
自分の気持ちを飾らずに、正直に語っている感じがするのが好印象ですね。この箇所も含め、本書を通して自分が受け取った教訓としては、いかにして、嫌なことでもルーティンとして確立するか、といったところでしょうか。