中屋敷均(2019)『科学と非科学――その正体を探る』

 

科学と非科学 その正体を探る (講談社現代新書)

科学と非科学 その正体を探る (講談社現代新書)

 

 

 「偶然」や「不確実性」と、それらが人間生活にもたらす影響に関して、14編の短いエッセイから構成されている著作でした。

 「単純な条件下における絶対的な真理を求める科学」と、「100%の確実性がないことを前提とした上で現実生活への適用を考える科学」という2つを区別し、原発や農薬のリスクなどを後者の観点から説明がされています。

 なぜ100%の確実性を持って言えないかというと、現実における様々な撹乱要因(たとえば、重力加速度の公式であれば空気抵抗)のためですが、これを野球盤における「消える魔球」でたとえたり、不確実な中でも何らかの保証を科学に求める姿勢を、「デルフォイの神託」になぞらえたり、科学的と思われているものが実は相当に非科学的なものとの境界に位置づいてるということが、本書を取り巻くテーマとして伝わってきます。

 現状では人間が根本的に理解し尽くすことのできない不確実性があるため、科学的合理性の行き過ぎに対しても警鐘が鳴らされています。その観点から、近年の大学改革における「選択と集中」の問題点が挙げられ、「無駄の必要性」につながってゆく流れが面白かったです。