大卒就職と「第一世代」

両親が高校卒業後の教育歴を持たず、自身は高等教育に進学した人々を、高等教育論では「第一世代 First-Generation」と言う。

アメリカにおける実証研究によれば、第一世代の学生は、そうでない学生よりもGPAの成績が低い、中退率が高い、就労しながらパートタイムでの進学する割合が高いことなどが知られている。これらは、親が高等教育経験を持つかどうかで、親が子どもに具体的な助言を行うことや、子ども自分で高等教育に進学することへのイメージを持つ機会に差異が生じることによって、部分的に説明される。

レビューをきちんと行っているわけではないが、日本の高等教育論では、この第一世代の枠組みに基づいた研究はあまり行われていないように思われる。アメリカの高等教育においては、二年制のコミュニティ・カレッジの持つ意味が大きい、パートタイム進学が多いなど、日本とは状況が異なっているので、単純に第一世代の概念を適用することはできないのかもしれない。

しかしながら、最近の大卒就職のニュースを見ていて、この第一世代の議論が頭に浮かぶことがあった。
それは近年、大学主催の就職説明会に親が参加するなど、大学生の子どもの就職に親が支援・介入してきているというものである。

自分の卑近な例を挙げれば、自分は上記の定義で言う第一世代にあたるが、親から大学卒業後の進路について具体的に何か言われたという経験が一切ない。というのも、親自身に高等教育の経験がないため、大卒就職がいかなるプロセスで行われるかが、全くイメージできていないからである。

上記で述べたような、親の支援・介入を受けている大学生は、ほぼ間違いなく非第一世代に当たるのではないか。
親のそうした行動が、子どもの就職に対して実際に効力を上げるのかどうかは定かではないが、親の背景によって新たな現象が生まれているであろうことは意識されてもよいと思う。

今、大学3,4年生の親はだいたい50歳程度考えるならば、その出生コーホートの大学進学率(短大含む)は男で40%強、女で30%強だ。
新聞報道などではおそらく全く意識されていないが、大卒就職を支援している親たちは、決してマジョリティではない。