Lawrence, Matthew and Richard Breen. 2016. "And Their Children after Them? The Effect of College on Educational Reproduction." American Journal of Sociology 122(2): 532-72.
公刊されてわりとすぐにダウンロードはしており、読まないとなあとは思っていたのですが、ようやくという感じです。
世代間の教育達成の関連をパネルデータで「前向き」(prospective)に検証するというのが目的になっています。通常のクロスセクションデータによって、回顧的に得られた親学歴の変数を使用すると、本人(子ども)は代表性があっても、親は代表性がないというのが問題の焦点です。実際に子どもを持った人々の情報しかデータには入らないため、出産行動によるセレクションがあるということになります。
とりわけ大卒女性は子どもを持ちにくい傾向にあるため、通常のクロスセクションデータでは、親大卒→出産→子大卒という間接効果が適切に推定できないことになります。
本論文はそうした問題を踏まえ、潜在結果モデルのフレームワークにより、パネルデータに対して周辺構造モデルを適用した推定になっています。
周辺構造モデルにおいて、直接効果と間接効果に分解するという手続きは勉強したことがなかったので、とても興味深いところでした。下位集団ごとに異なるウェイトを計算するというのがポイントですか。
近年のトレンドなのか、知見の頑健性の検証にもかなり力が注がれていますね。潜在結果モデルによる因果効果の推定は、処置変数の割り当てに対する潜在結果変数の値の条件付き独立(観察されない交絡変数の不在)という直接検証できない仮定に依存しているので、感度分析によってシミュレーション的に頑健性を確認するという手続きですね。
uniform selection,positive selection,negative selectionという3つのシナリオを仮定しているのですが、ここの詳細は一読しただけではまだ理解できませんでした。