宮本太郎『生活保障―排除しない社会へ』

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

 生活保障とは何か。それは、雇用と社会保障をむすびつける言葉である。人々の生活が成り立つためには、一人ひとりが働き続けることができて、また何らかのやむを得ぬ事情で働けなくなったときに、所得が保障され、あるいは再び働くことができるような支援を受けられることが必要である。生活保障とは、雇用と社会保障がうまくかみあって、そのような条件が実現することである。
(p.iv)

アクティベーション(活性化)の理念を基礎に、「参加支援」、「働く見返りの強化」、「持続可能な雇用創出」、「雇用労働の時間短縮・一時休職」を推進し、「排除しない社会」を目指す構想。また、参加支援を促す上で、教育、家族、失業、体とこころの弱まりという領域と労働市場の行き来を一方向的なものではなく、「交差点型」の社会というものが提唱されている。

非常に素晴らしい構想であるのだが、それゆえに現状からではとても道のりが遠く感じられる。


第3章「スウェーデン型生活保障のゆくえ」は最近の話が網羅されていて非常に勉強になった。積極的労働市場政策が十分に機能しないことへの対処としての、失業保険の改革や新しい産業の創出というような政策は、理念との対応がよく分かるかたちで平易に書かれていてよかった。

それから気になったのは、p.77の表で引用されているOECDによる2003年の「雇用保護法制指標(個別の労使関係における解雇の困難さ)」が、日本とデンマークが同じ値であること。デンマークは解雇規制が弱く、日本は強いというイメージに反するもので、やや意外。どうやって指標が計算されているんだったか。