安部公房『砂の女』

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

安部公房らしい現実ばなれした不気味な世界観と、男が様々な知恵を凝らして試みる脱出劇に引き込まれた。

最初と最後に出てくる失踪届のくだりが、男が結局元いた生活には戻らなかったことを暗示していて、奇妙な舞台と日常世界をつなぐ効果を果たしている。


また、砂地には砂地に適応した珍しい昆虫がいるはずだ、と昆虫採集に来た男が、徐々に穴の中の生活に適応してゆくという類比がすばらしい。