Stinchcombe(1997)「旧制度学派の美徳について」

Stinchcombe, Arthur L. 1997. "On the Virtues of the Old Institutionalism." Annual Review of Sociology 23: 1-18.

 

  • 研究会で読んだ文献との関連で読み直しました。院生時代から何度か読んでいる論文ですが、ようやく少し分かった気がします。
  • Stinchcombeで思い出すのは、K先生が「大学院時代に一番すごい先生だと思った。(James)Rosenbaumよりもすごかった」と仰っていたことがありました。

 

  • Oliver Williamsonに代表される新制度学派(new institutionalism)は、競争の概念を単なる組織間の関係性に単純化してしまっており、競争が起きる市場というものがなぜ正当性を有しているのかを問わない。これに対してCoase、Commons、Schmpeterなどの旧制度学派では競争や契約が正当性を持つ過程により自覚的であった。
  • 取引契約の道徳的なコミットメントという側面は、市場における組織の存在可能性にとって中心的なものである。
  • 現代の制度論を戯画的に表せば、集合表象がそれ自身を不透明な過程で作り出し、普及(diffusion)によって実装され、人間が存在せずに外的に拘束するものという意味で、Durkheim的である。
  • 旧制度学派の論者は、制度が常にそこに存在し、常に働くとは想定しなかった。
  • Schumpeterは経済成長は革新者、すなわち他の企業を模倣せず、しかし既存の事業に対して正当に損害を与えられる企業に依存することを説得的に議論した。
  • 新制度学派の問題点は、制度の中にもっとも重要な部分(guts)がないことである。制度のもっとも重要な部分とは、どこかで組織の基準を保つことに真剣な関心を持ち、またそのためにしばしば報酬を与えられる人間である。