Kennedy and Gelman(2021)「自らの母集団とモデルを知れ」

Kennedy, Lauren, and Andrew Gelman. 2021. "Know Your Population and Know Your Model: Using Model-Based Regression and Poststratification to Generalize Findings Beyond the Observed Sample." Psychological Methods 26(5): 547-558.

 

  • 心理学実験では大学生など有意抽出(非確率サンプル)の利用が多く、伝統的なデザインベースのウェイトを作成するのが難しい
  • マルチレベル回帰分析と事後層化(multilevel regression and poststratification: MRP)の有意抽出サンプルへの適用
    • 小区域推定(small area estimation)と無回答の補正に関する2つの研究分野を組み合わせた方法
    • 政治学の分野ではすでに多くの適用事例がある
  • 心理学ではランダム化実験の方法が用いられるが、人口学的特性との交互作用が存在する場合には、母集団を考えることなしには平均処置効果を解釈することができない

 

  • MRPの手続き
    • (1)調査を実施する際に重要な人口学的特性を測定する
    • (2)事後層化表の識別:考慮する人口学的特性の可能な組み合わせに関して、母集団における度数を推定する
    • (3)サンプルにおいて(母集団において推定したい)重要な統計量を測定する
    • (4)サンプルにおいて観察された人口学的特性を考慮し、マルチレベルモデルによる予測によって、関心のある統計量の母集団における値を推定する
    • (5)事後層化表のそれぞれのセルにおける従属変数の値を推定する
    • (6)母集団レベルの推定値を得るために、事後層化表のセルをそれぞれの大きさに基づいて集計する

 

  • MRPはサンプルの代表性がなく、かつ人口学的特性が交互作用を持つと考えられるときに有効である
    • この条件にあう事例であったとしても、サンプルが実際に異質性を持たない場合には十分ではない→処置効果が若年者と高齢者で異なると予想されるときに、サンプルが学部生である場合
  • MRPを適用するにはさらに、マルチレベルモデルをあてはめるために十分なデータである必要がある
    • 一般的なことを言うのは難しいが、個人間デザインのサンプルにおいて50人の個人しか含まれない場合には、MRPの推定値は不安定であるか、推論が事前分布に強く依存することになるだろう

 

  • MRPを適用するにあたり、どのような共変量を考慮すべきか
    • Simons et al.(2017)は一般化の制約(constraints of generality: COG)をすべての実証研究は明確に述べるべきと主張しており、これが予想される効果の異質性や統制する変数の参考になりうる