武富健治『鈴木先生』(6)

鈴木先生 6 (アクションコミックス)

鈴木先生 6 (アクションコミックス)

中学生たちに道徳の基準を限界まで検証させたらどうなるか、という実験的な話だった。

この漫画は、国語や数学などの授業を行っている様子はほぼ全く出てこない。給食のメニューから、ある生徒が好きな酢豚がなくなってしまうことに対してどう思うかとか、周りの生徒が掃除をさぼって帰る中、一人でまじめに掃除をやっている生徒が何を考えているのか、とかいうような話ばかりが出てくる。現実の学校では大して面白みがないような話題だ。

しかし、主人公の「鈴木先生」は、そうした話題の背後にある様々な前提を問い直すことで、等閑視できない問題を次々に見出し、生徒に説得的に話してゆく。そこから生徒に与えられる影響は、どのような授業よりも「教育的」なものになっている。

この第6巻では、「できちゃった結婚(妊娠先行型結婚)」という鈴木先生自身の問題に対して、生徒がその是非を問いかけてゆく。討論の過程で、生徒たちは単純な性道徳の問題ではなく、「シングルマザー」の問題や経済的な問題など様々な要因があることに気づいてゆく。そうすることで、「白か黒か」という二分法による思考でも、「世の中色々な人がいる(=だから基準など問えない)」という思考停止でもない、別の道を探ることになる。


学校という場(とりわけ初等・中等教育)において様々に投げかけられる道徳の問題に対して、「お前たちは子どもだから(=判断力が未熟だから)わからない」、とか「世の中には絶対的な基準なんてない(場合によって何でもあり)」というような紋切り型の回答をすることは容易い。
そうした回答に満足せず、できる限り納得のゆく答えを出そうとしているところがこの漫画の面白いところであり、普通の学園モノとは違うところ。


次の巻も楽しみ。