メアリー・C・ブリントン『失われた場を探して―ロストジェネレーションの社会学』

失われた場を探して──ロストジェネレーションの社会学

失われた場を探して──ロストジェネレーションの社会学

 私がこの本でとくに取り上げたいのは、エリートでない日本の若者たちがいかにして「行き先を失ってしまったか」だ。大学に進学したり大学受験のために浪人したりせず、高卒で就職しようとした若者は、おうおうにして正社員の仕事に就けず、学校という「場」から仕事という「場」にうまく移行できずにいる。高校という「場」はもう離れてしまったのに、社会で一人前の大人になるための条件と見なされていた次の「場」――安定した勤務先という「場」と結婚生活という「場」――にも移れていない。大勢の若者が大人の「場」に移行できずにいることに、日本の政府や大人たちがいかに頭を悩ませているかは、マスコミの報道や政府の報告書を見ればよくわかる。
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ロストジェネレーションという現象を、「場」の喪失という観点から切り出している。
日本の経済がかつてうまく回ってきたことを、教育レベルが低い男性をうまく職業に移行させてきたからだと、人的資本の開発の仕組みと結びつけて論じているところが卓抜。

4章「高校と企業の『実績関係』に起きた変化」のシミュレーションを交えた、普通高校での実績関係の衰退、進路未決定者の多さを示した結果は、何となくそうだとは思っていても、改めて見てみて衝撃的だった。


しかし、「場」がすでに喪失しているにもかかわらず、標準的なライフコースという規範が働き続けているのはなぜだろうか。