苅谷剛彦『オックスフォードからの警鐘――グローバル化時代の大学論』
オックスフォードからの警鐘 - グローバル化時代の大学論 (中公新書ラクレ)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/07/06
- メディア: 新書
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今年の東大の学内広報を読んだ時も思いましたが、日本の大学の置かれている危機や展望について、積極的に発言されていますね。
- 「リアルな競争」と「想像上の競争」という概念は面白かったです。たしかに、日本の大学が置かれた状況は人材や資本がグローバルに移動しているという意味での「リアルな競争」ではなく、大学ランキングを下にして国際競争力が脅かされているという「想像上の競争」の面が大きいのでしょう。
- オックスフォードのチュートリアル制度による密度の高い知的鍛錬についてはたとえば、東大の入学式の祝辞でも触れられていましたね。また、アクティブラーニングの流れについても批判的であり、履修するコマ数が多く、十分に予習・復習をする時間を前提としていない日本の履修制度の下で、主体的な学習を進めようとするのは危険とのことです。
- 先生がここ数年の間に取り組まれている、「追いつき型近代」の理論を現代まで延長させ、日本の大学政策とも関連付けるというのは面白いとは思いましたが、論証の正確さについてはどうなのでしょうか。たとえば韓国では異なる分岐が見られるというのは、もう少し細かく見ないといけないような気もします。まあ、全体としては、タイトルにもあるように「警鐘」を鳴らすのが目的で、緻密な検証にはそこまでこだわっていないようにも見えますが。
- 穿った見方をすると、学力格差の議論の時と同じように、警鐘を鳴らすだけして、その後はまたすぐ別のテーマに移ってしまうのかもなあという気がしています。