Knight and Brinton (2017) "One Egalitarianism or Several? Two Decades of Gender-Role Attitude Change in Europe"

Knight, Carly R. and Mary C. Brinton. 2017. "One Egalitarianism or Several? Two Decades of Gender-Role Attitude Change in Europe." American Journal of Sociology 122(5): 1485-1532.

 

 潜在クラス分析の頑健性の確認のために、いくつか補足的な分析が行われており勉強になりました。

 

  • 多くの性別役割分業意識の研究は、伝統的/リベラルという一次元で捉え、近代化とともにリベラルな方向へと単線的に変化すると想定してしまっている
  • 性別役割分業意識を多元的なものと捉え、国ごとに異なる変化を明らかにする
  • データはWorld Value SurveyとEuropean Value Survey
  • 性別役割分業意識に関する7つの項目から、潜在クラス分析によって4つの類型を抽出
  • (1)伝統主義(traditionalism):すべての項目において伝統的な女性の役割を支持。一貫して減少傾向にある。
  • (2)リベラル平等主義(liberal egalitarianism):典型的なジェンダー平等主義として描かれる類型に相当する。夫婦はともに家計に貢献すべきという考えや、仕事を持つことが女性が自立する上で最良の手段であるという考えを支持する。主婦であることが賃労働と同じように充実しているという考え方は否定する。
  • (3)平等主義的家族主義(egalitarian familialism):リベラル平等主義と同様に、夫婦はともに家計に貢献すべき、仕事を持つことが女性が自立する上で最良の手段であるという考えを支持する。しかし、家族や子どもを持つことが女性の人生において必要であるという本質主義的な考えを支持するのが特徴。東欧諸国において増加した類型である。
  • (4)柔軟な平等主義(flexible egalitarianism):リベラル平等主義と同様に、男性の労働市場での優先を否定し、また仕事を持つ女性は主婦と同じように子どもとよい関係を保てると考えている。しかし、夫婦はともに家計に貢献すべきという意見への支持は弱く、主婦であることは賃労働と同程度に充実したものでありうるという意見への支持が強い。また、家族や子どもについての女性の人生にとって本質的であるという考えは否定する傾向にある。フィンランドでは90年代にリベラル平等主義が減少し、この類型が増加した。