Weiss(1995)人的資本モデル・選別モデルの共通点と相違点

 

Weiss, Andrew. 1995. "Human Capital vs. Signalling Explanations of Wages." Journal of Economic Perspectives 9(4): 133-154. 

 

 この論文における「選別」(sorting)とは、シグナリングとスクリーニングの両者を含んだもの。

 人的資本による解釈と選別による解釈の間の違いについてはいくらかの誤解が存在してきたので、選別モデルは人的資本モデルの特徴のすべてを包含しているという点は再び強調するに値する。特に、どちらのアプローチも学校における学習が存在することを許容する(人的資本モデルでは必要となる)。どちらのアプローチにおいても、利潤の最大化を目的とする企業は効用最大化を目的とする労働者と競合し、一連の観察される特徴を所与とした際に労働者が生涯において得る対価の期待値は、そうした特徴を有する中からランダムに選ばれた労働者が持つ生涯の生産性の期待値に一致する。人的資本モデル・選別モデルのどちらにおいても、個人は教育によるコストが限界的なリターンに一致するように就学年数を選択すると仮定される。両モデルが異なるのは、選別モデルでは企業からは観察されない特性が学校教育と相関を持つことが許容されるという点においてである。
 政策志向の研究の多くが、企業から観察される特性のすべてを調整することによって教育のリターンを計算することに打ち込んできた。政策が形成される際に、これらの私的リターンの推定値はしばしば社会的リターンの推定値として用いられてきた。政策的な観点からすれば、人的資本モデルと選別モデルの重要な違いは、選別モデルにおいては企業から観察される特性をすべて考慮した後にも、教育の係数は生産性に対する就学・経験の効果としてはバイアスのかかった測定になっているかもしれないということである。選別モデル的な考察が重要である場合に、得られた係数が適切な推定値となるのは教育の私的リターンに対してのみであり、社会的リターンに対してではない。[136]