Miller, Shazia Rafiullah and James E. Rosenbaum 1997. "Hiring in a Hobbesian World: Social Infrastructure and Employers’ Use of Information." Work and Occupations 24(4): 498-523.
Rosenbaum(2001)の一部の章にもなっている研究ですね。
われわれの得た知見は、社会的基盤が情報を伝える手段となっているだけではなく、雇用主が情報を認識する方法に、とりわけその情報を信頼するかどうかに影響することを示している。特定の経済的な意思決定においては、情報は信頼できる場合にのみ用いられ、これらの場合においては社会的基盤はそうした信頼が存在するかどうかに影響しうる。情報が伝わるメカニズムに疑念が生じた場合には、その情報は用いられないのである。
他者から得られた情報を人々が用いる状況を問うにあたり、トマス・ホッブズが考えたのと類似した問題を検討する。ホッブズは競争社会の文脈において、情報を提供する人々の利己的な動機や利益相反によって情報の価値が汚染されている(tainted)可能性がある場合に、人々がどのようにして協力が可能であるかを問うた。もしすべての情報が汚染されているとみなされれば、人々は外部からの情報を避け、自ら生み出した情報のみを頼るだろう。人的資本理論・シグナリング理論は、雇用主が用いたい基準については正しいかもしれないが、どの情報が実際に信頼できると雇用主が感じるかをホッブズは問うたのである。もし雇用主が自らをホッブズ的な状況にいるとみなせば、雇用主が信頼できる経路から情報を受け取る場合にのみ労働市場は働くであろう。[499-500]
常識的に言われるように、若年労働市場の問題は雇用主が自らにとって好ましい技能を持つ労働者を得るのが困難な際に生じる。しかしながら、われわれの知見によれば問題であるのはシグナリング理論が主張するもの、つまり雇用主が十分な情報を有しないことではない。むしろ、雇用主は信頼可能で有用な情報を特定できないことに困難を感じているのである。雇用主は多くの情報に対してアクセスを有しているものの、関係を持たない人々からの情報の信頼性と有用性に疑念を持っているのである。[516]