『東京物語』

東京物語 [DVD]

東京物語 [DVD]

小津安二郎監督、1953年の作品。

小津作品は『生れてはみたけれど』に続き2作目。極端なローアングルから撮影する手法は、本作においても多用されている。

時代は、戦後初期。老夫婦が広島県尾道から、東京にいる子どもたちに久々に会いに行く。しかし、東京で数日過ごした後に尾道に戻ると、妻が急逝してしまう…というような話。


映画は、昔の生活に対する感性を養ってくれる、優れたメディアであると思う。

本作は新幹線も飛行機もなかった時代で、尾道から東京まで電車で十数時間かけて行っている。この時代は離れたところに住む家族に会いに行くのは、今と比べ物にならないほど大変だったわけだ。

また老夫婦の次男の妻が、様々に気を遣うシーンがある。
これまで日本の福祉というのは、国家によってではなく私的な領域、すなわち娘や息子の妻の家事労働によって担われてきたということが言われるけれども、そういった日本的な家族の表象も見られると思った。
ちなみに、ローアングルから撮影するという手法は、「ちゃぶ台」を囲んでいる時の目線を意識していると言われ、これまた昔の家族のあり方と関わっている。

後は、何だろう。小津作品は親子関係について考えさせられる。
「親孝行、したいときには親はなし」みたいなセリフが出てきたが、自分も意識せざるをえない歳だな、と思った。