「中央公論」編集部編『論争・中流崩壊』

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

大竹文雄先生の論文、就業構造基本調査に基づいて「80年代は低所得男性の配偶者ほど有業率が高いというダグラス=有沢法則が明確に成り立っている。だが、90年代に入るとその関係は弱くなり、97年には、夫の所得と妻の有業率には負の相関関係は観察されなくなっている。(p.96)」と述べているが、どう見ても掲載されている図では、97年に夫の所得と妻の有業率に負の相関関係があるように見える。しかも80年代よりも傾向として強くなっているんだけど…。


佐藤俊樹先生の一連の論考については、「団塊の世代以降、40歳時のホワイトカラー雇用上層の世代間継承の閉鎖性が高まっている」という主張を取り上げれば、盛山先生らの批判の方が説得的に聞こえる。しかし、「機会の不平等は後から、しかも限定的にしか確認されない」という主張については、今読んでも示唆に富んでいる。これを踏まえるならば、「結果の不平等があることを認め、機会の平等さえ確保されていればよい」というような主張は空虚であるし、また統計データから社会の全般的な不平等の傾向が確認できる、というような研究上の姿勢にも注意しなければならない。