大学院生活をしていると、メンタルヘルス上の問題が深刻になっているとつくづく感じる。
「タフな東大生」とか言っている暇があったら、大学当局は現実に起きていることをもっと直視すべきではないか。
ちょっと古い引用になるが、
http://blog.goo.ne.jp/masakichi917/e/1e267851ce90500669265bed4e7db0e4
日本全体の自殺率は0.024%(WHO 2004年発表)
日本の大学院博士課程修了者で「死亡・不詳の者」の割合は11.45%(文科省 2004発表)
上記の「死亡・不詳」が必ずしもメンタルヘルス上の問題ではないわけだけれども、おそらく少なからぬ割合がそうなはず。
しかも、上記の割合は博士課程修了者(「学校基本調査」を基にしているとすれば満期退学も含んでいると思われる)を母数にしているわけで、それまでに「死亡・不詳」となった人は計算されていない。すなわち、累積のfailure rateを計算するともっとすごいことになるはず。
一般に大学の先生とか研究者は世間知らずとかコミュニケーション能力が低いというイメージを持つ人がいますが、同書[『高学歴ワーキングプア』]を読むと、要求される世渡り術は下手なサラリーマンの比じゃないほど高いことがわかります。
付いて行っても大丈夫かどうか良さそげな師匠を見極め、各方面に気を遣い、研究室では後輩の面倒もみなきゃならない。30歳すぎて博士号持っていても、学会の際に呼び鈴チ―ンと鳴らす係や、登壇発表者の水差し取替え係などを、内心の懊悩を隠して如才なく務めなきゃならんという。(こんな雑用は企業だったら3年生以上はほとんどやらないんですが・・)
確かに大学院という環境が生み出すストレスは影響しているはずだが、問題なのはそれがどの程度なのか、ということが十分に意識されていないことではないかと思う。
すなわち、そもそも大学院に進学するような人がメンタルヘルス上の問題を抱えやすいパーソナリティを有しているからなのか、大学院の教育研究環境に構造的な問題が存在するからなのか、(天下の愚策である大学院重点化の影響もあって)修了後の就職環境が悪いからなのか、といった要因のどれが重要なのかが把握されていない。
臨床心理の専門家は議論しているのかもしれない。しかし、例えば各研究科の学生担当の教官はほとんどこんなことは考えていないと思われる。そのため、一定程度は大学院の教育研究環境に責任があるかもしれないにもかかわらず、「最近の学生は打たれ弱い」と言ってみたり、学生相談所のチラシを配ってお茶を濁したりする教員もいる。
研究能力のない院生ほどメンタルヘルス上の問題を起こしやすいかと言えばそんなこともなくて、能力のある人ほど脱落してしまう事例を見たり聞いたりするにつけ哀しくなる。でもって、優秀な学部生ほど文系大学院に進学しないこともむべなるかなと思ってしまう。