学振特別研究員の「採用終了5年経過後の常勤の研究職への就職」比率という指標

 

 日本学術振興会の特別研究員制度では、就職状況調査」が公開されており、その中でも「採用終了後5年経過後の『常勤の研究職』への就職比率」に重点が置かれています。具体的には平成29年4月時点で、DC採用者は79.5%、PD採用者は91.9%が終了5年後時点で「常勤の研究職」に就いており、「我が国の研究者の養成・確保の中核的な役割を果たしている」と結論付けられています。

 この指標に意味がないというわけではないのですが、もう少し情報公開してもよいのではないかと思います。そもそもこの比率がどこから計算されているかというと、終了直後に関しては「採用期間終了後の異動届」(様式11)に記入される就職先からでしょう。1年後、5年後、10年後については追跡の調査を行っているのでしょうか。ちょっと自分の記憶にはないのですが、追跡調査を行っているのであれば、回答率が気になるところです。

※追記 過去のメールを調べていたら学振からの追跡調査の依頼がありました。ウェブまたは郵送回答による追跡調査を行っているようです。)

 

 「採用期間終了後の異動届」では常勤の場合は任期の有無まで区別して記入することになっています。よって、「任期の定めのない常勤職」への就職比率も計算しようと思えばできるはずです。この点に関して、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が行っている「博士人材追跡調査」では、「任期あり/任期あり(テニュアトラック)/任期なし」を区別して調査結果を公開しており、はるかに有意義な情報となっています。さらに学振の調査では非常勤・ポスドク以外の研究職はすべて「常勤」のカテゴリーに入れているようですが、NISTEPの調査では職階別の比率が公開されているという違いも見られます。

 全体的な印象として、学振の就職状況調査結果は情報公開というよりも、制度がうまく働いているというアリバイ作りという感じが否めないところがあります。