Billari et al.(2019)「成人期への移行における選択の社会階層」

 

Billari, Francesco C., Nicole Hiekel, and Aart C. Liefbroer. 2019. "The Social Stratification of Choice in the Transition to Adulthood." European Sociological Review 35(5): 599-615.

 

  • 成人期への移行(transition to adulthood)が社会経済的要因によって階層化される理由に関して、3つの経路を区別する:(1)階層化された社会化、(2)階層化されたエージェンシー、(3)階層化された機会
  • 階層化された社会化:家庭のSESの高低によって、主要な人口学的イベントが起きるタイミングに関する若年者の期待と意図は異なる
    • 高SES家庭出身の若年者はより早く実家を離れようとする一方で、パートナーと同居し、子どもを持つことに関しては遅らせようとすることが予想される
  • 階層化されたエージェンシー:家庭のSESによって、若年者は期待と意図を実際の行為に変換する能力も異なる
    • 高SES家庭出身の若年者は、離家、パートナーとの同居、結婚、出産に関してより自らの意図を実現しやすいと予想される
  • 階層化された機会:家庭のSESによって、特定の人口学的イベントを早期に経験しやすくなるような制約に異なった直面の仕方をするかもしれない
  • たとえば、家族人数の多さ、失業率、キャリアの選択肢の欠如、効果的な避妊へのアクセスの制約などによって、パートナーとの同居や子どもを持つことへの移行が早まる可能性がある;高いSES家庭出身の子どもは、より長く学校に就学するし、またこのような家庭出身の女性は高い機会費用に直面するので、家族イベントを遅らせる傾向にある
    • 高SES家庭出身の子どもは、より早く離家し、他方でパートナーとの同居や出産を遅らせる傾向にある
  • データとして、Generation and Gender Surveyの2時点の観察を利用する
  • Wave1時点で18~35歳の人々を分析に含める
  • 分析に含まれる国は、フランス、オーストリアブルガリア
  • Wave1で次の3年間に様々な人口学的イベントついての意図を尋ね、Wave2でそれらが実現したかどうかを測定している
  • イベントの種類は、離家、同棲、結婚、子どもを持つこと
  • 親のSESとして、父母の最高学歴と職業的地位を利用する;親学歴は国際標準学歴水準(ISLED)という一次元の連続スコアに変換し、職業的地位は国際社会経済的職業指標(ISEI)に変換して利用する
  • Wave1での意図と、Wave2でイベントが実現した比率には大きな差がある;ポジティブな意図(~をするつもり)はネガティブな意図(~をしないつもり)よりも実現しにくい
  • 構造方程式モデルによって多変量解析を行う
  • 高SES家庭出身の若年者は、より早い離家を意図し、より遅い同棲・結婚・親への移行を意図する傾向にある→階層化された社会化を支持
  • 高SES家庭出身の若年者は、離家、同棲、子どもを持つことの意図をより実現しやすい→階層化されたエージェンシーを支持;ただし結婚に関しては有意差なし
  • 意図の水準を統制しても、低SES家庭出身の若年者は4つのイベントを経験しにくい→階層化された機会を支持
  • 3つの経路のうち、階層化された社会化にのみ、年齢による違いがみられた;年齢が低い段階では、高SES家庭出身の子どもはより結婚と子どもを持つことを望みにくい
  • ジェンダーによる違いはみられなかった;唯一の例外として、男性にくらべて女性は離家の意図をより実現しやすい
  • 実質的な国家間の違いもみられなかった;ただし、意図と行為の関連はブルガリアにおいて全般的に弱く、これはブルガリアの経済状況と住宅環境の悪さを反映している可能性がある
  • この研究の限界として、Wave1時点でまだイベントを経験していない人々のみを対象としているというものがある;女性と年齢の高い対象者はすでにイベントを経験している比率が高い
  • 機会構造が変化しているときに意図は不安定なものとなる;GGSでは3年間という比較的短い期間で意図と行為の関係を観察できるという強みがあるものの、3年間という期間ですら当初の意図の変化を引き起こす様々な外的変化があるかもしれない
  • 親のSESとしては単一次元の指標を用いたものの、階層化された社会化については、SESの経済的な側面より文化的な側面に依存するかもしれない
  • 離家の行き先を区別することや、移行を連続的なもの(sequence)として捉えるフレームワークも興味深い