- 授業のネタ探しのために、Mertonの理論について調べていたところ、この論文にあたりました。
- マイクロ―マクロのつながりを考慮する必要があるのは、社会現象における個人レベルでの意識や行動を超えた創発特性(emergent property)が生まれるプロセスの重要性を認識する場合であるとし、この論文が書かれた当時の社会心理学では、そうした創発特性に関心を払わない立場が主流であるとしています。
- 実際のところ本論文は社会心理学のジャーナルに掲載された論文ですが、Durkheim、Blau、Merton、Collins、Boudon、Colemanなどが引用されており、異色ですあるがゆえに社会学的には非常に興味深いです。
- 創発特性が生まれる重要なプロセスの一つとして、「行為の相互依存性による意図せざる結果」に議論が絞られています。
- Hardinの「共有地の悲劇」に関する議論を挙げ、「意図せざる結果」は必ずしも「予期されざる結果」を意味しないという指摘はなるほどと思いました。ゲーム理論における様々なタイプのナッシュ均衡に関しても言えるのかもしれません。
- 合理的選択理論は、個々人の行動の説明については限界の大きい理論であるものの、マイクロ・マクロ過程分析のためには、非常に有効であるという評価がなされており、これはこの前読んだ論文でも同じようなことが書かれていました。
- 本論文は理論的な議論が多く、学部生向けの授業の課題文献には使えなさそうですが、山岸先生が高校生向けに書いた新書の中でたしか出てきたいじめの話などは、本論文で言うところのマイクロ・マクロ過程分析のわかりやすい事例として、使えるかもと思いました。