特別展『ぼのぼの』連載35周年記念 ぼのぼのたちの杜

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  • 仙台文学館にて。台原森林公園の端っこあたりに位置していて、市の中心部からだとちょっとアクセスが悪い場所にあります。地下鉄の駅からだと台原森林公園の中を通って行く形になります。
  • 台原森林公園に行ったのは、小学校の遠足以来ですね。ほとんど記憶がないのですが、その時は公園内にある仙台市科学館かアスレチック広場を訪れたのでしょうか。学校からバスで泉中央駅まで送迎されて、そこから地下鉄で行ったような気がします(現地まで直接送迎しなかったのは、おそらく地下鉄の乗り方を勉強させるという目的でしょう)。「『台原』森林公園ですが、『台原駅』ではなく「旭ヶ丘駅」で降ります」ということを、何回も先生に強調された記憶があります。

 

  • 仙台文学館へは科学館とは逆方面に公園内を通るのですが、登山道のような険しい道も途中ありました。

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いい感じの紅葉の時期でした。
  • ぼのぼの』はアニメを一時期観ていたのと、原作も少し読んだことがありました。スナドリネコさんの謎めいたところと、達観したセリフが好きです。
  • 作品中で大きな時間は経過しないものの、35年の連載の中で少しずつ家族関係が変化したり、キャラクターが成長したりしてきた過程が知れました。また、この特別展のポスター絵の作画・彩色の映像がとてもよかったです。

Redbird and Grusky(2015)「レント、レントシーキングと社会的不平等」

 

Redbird, Beth, and David B. Grusky. 2015. "Rent, Rent-Seeking, and Social Inequality." In Emerging Trends in the Social and Behavioral Sciences. Wiley. (Available from http://onlinelibrary. wiley. com/book/10.1002/9781118900772)

 

  • 賃金プレミアムとして現れるレントの例として典型的なものに、(1)供給が過小な生まれつきの能力、(2)最低賃金、(3)労働組合への加入、(4)勤労所得税額控除(EITC)などの賃金補填を伴う移転プログラムがある。
  • 職業の閉鎖性に注目し、Current Population Surveyから、(1)労働組合への加入の有無、(2)職業に関する準学士(associate degree)を保有しているか、(3)資格免許(licensure)を要する職業で働いているかどうか、(4)50%以上が大卒学歴を有する職業であるかどうか、の4つを指標に設定。
  • 階級構造の下位に位置する職業では、少なくとも1つの閉鎖性に該当する人々の割合が低下する一方で、上位の職業では逆に該当する人々の割合が上昇している。この違いは、下位の階級では労働組合の衰退の影響で閉鎖性が低下しているのに対して、上位の階級では大卒学歴や資格免許の要件による閉鎖性が高まっていることによる。
  • 所得へのリターンの大きさを比較すると、資格免許を要件とする職業であるよりも、労働組合への加入の効果がより大きい。階級構造の下位の職業でも資格免許による閉鎖性は高まっているものの、労働組合の衰退の効果を補うほどのものとはなっていない。こうした階級構造下位により集中したレントの崩壊が、アメリカにおける所得格差拡大の一部を説明している。

OECD諸国の高等教育費支出の内訳

 

  • OECDEducation at a Glanceの一環として収集されている高等教育費支出の内訳データですが、Public/Privateの区別だけではなく、さらにPrivateの中で"Household"と"Other private entities"が区別して集計されているということを知りました。2012年頃から集計されている国の数が大きく増えているので、自分が知らなかっただけで結構前からのことのようでした。
  •  "Household"は学生と家族による負担、"Other private entities"は民間企業、非営利企業(宗教団体、慈善団体、労働団体)による負担ということでした。
  • たとえば、日本よりアメリカではOther private entitiesの値が大きいのは何となくそうかなという気はしますが、日本も全体支出の中で15%くらいがこのOther private entitiesになっているんですね(2018年)。結構大きいように感じましたが、どのようなものが具体的に集計されているのでしょうか。国別のAnnexを見ても詳しくは書いていませんでした。
  • Education at a GlanceのMethodologyの欄を見ると、"While public loan payments are taken into account, loan repayments from private individuals are not, and so the private contribution to education costs may be under-represented."という記述があったので、たとえば日本学生支援機構の貸与型奨学金は集計されていないという感じでしょうか。

岡田憲治(2019)『なぜリベラルは敗け続けるのか』

 

 

  • 「私は本書執筆で『友』を喪う覚悟を決めた」と帯にあります。これ以上の民主主義の破壊をどうにか止めたいという思いで、あえてこれまでに共に活動してきたリベラル陣営に対して、自省を促すスタイルの本です。本書が刊行されたのが2019年ということで、希望の党をめぐる野党の迷走に関する記述が多めだという印象を受けました。
  • 日本の野党勢力はいつまで経っても「オトナ」になれないとし、極端な善悪の二分で考えようとする傾向や、自分が絶対に正しいという立場から相手を「お説教」する傾向、「ゼニカネ」の問題を軽視する傾向などが批判されています。
  • 先日、法政大の山口二郎先生が本書の著者をTwitter上で批判しているのを目にしました。市民連合として野党間の協力に地道に携わってきた山口先生の立場からすると、いつまでも「オトナ」になれないという本書の主張は的外れという思いがあったのでしょうか。
  • 野党共闘がうまく行っていないのは、「綱領」と「公約」の区別を曖昧にしたまま、ぼんやりと「政策」の話をし続けているからではないかという指摘がありました。「綱領」が志を共にする人々が未来に対する夢やビジョンをまとめた決起の言葉、すなわち「内向きの言葉」であるのに対して、「公約」(マニフェスト)は選挙の際に有権者に訴えかける「外向きの言葉」であるとのことです。そのため、日本共産党が綱領において「日米安保の破棄」を掲げていても、それは公約という4年間で実現する政策目標とは異なるので、野党間で協力可能な「公約作り」は可能だ、とのことでした。この綱領と公約の区別は、共産党に対する連合や国民民主党の主張に対して、どのように考えるべきかといった面で勉強になりました。

非常勤先での授業

  • 今期は非常勤での授業が1コマ対面であるのですが、移動があるので何だかんだで2コマくらいの負担感があります。授業自体は対面の方がやりやすいのですが。
  • 非常勤先での授業の時って、時間的に外食になったり、ふだん行かないところなので気になったものを買ってみたりと、意外と出費がかさむんですよね。今日はタイミング悪くバスを1本逃して、次のバスまでの時間を潰すためにカフェに入ることになりました。授業準備や採点などにかかる時間も含めると、そもそも非常勤の授業は金銭的なコスト・ベネフィットで考えるべきではないという考えもあるとは思いますが。
  • 昔、『こち亀』のエピソードで両津がバイトをするんですが(そもそも公務員の副業になるわけですが、それはいつものことなので置いておくとして)、なかなかお金がたまらないことを不思議に思って振り返ってみると、気づかないうちに出先での飲食代によってほとんどバイト代が残っていなかった、というようなのがありました。非常勤の授業がある時に、よくこの話を思い出します。ちょっと気になったので調べてみたら、両津の全アルバイト履歴をまとめてくれているサイトがありました。おそらく137巻に収録されている回のようです。

成瀬尚志編(2016)『学生を思考にいざなうレポート課題』

 

 

  • 以前にオンライン飲み会の最中に、先輩に教えてもらった本です。
  • 科研費のプロジェクトの一環として刊行されたもののようで、こういうテーマでも1つの研究課題になるのは面白いですね。

 

  • 授業内容から組み立て始めるのではなく、「レポート課題から授業を設計する」という視点の転換。
  • 「レポートの執筆を通して、学生が自分の頭を使いながら考え、それにより学びが深まるような授業」を目指すべき。
  • インターネットの普及で剽窃・コピペが容易になったけれども、「剽窃・コピペはいけない」という指導だけでは不十分で、インターネットを活用することを前提とし、それでも問う意味のあるレポート論題を設定すべき。
  • たとえば、「功利主義とは何か」という定義を問うようなものだと、コピペが簡単にできてしまう。
  • 問いを学生自身が立てる論証型レポートは、学生がルールのわからないゲームをさせられているような感覚を持ってしまう可能性がある。
  • 学生自身がレポートで目指す目的やよさの基準をを理解した上で、創意工夫ができることが重要。
  • 論証型レポートに対して、具体的かつ単一のことを求める論述型レポートが考えられる。
  • 授業内容やテキスト、インターネット上の情報などの「素材」を学生がそのまま用いるだけでは、創意工夫は存在しない。
  • 「まとめなさい」、「説明しなさい」という論題では、素材を書き写しただけのレポートになりやすい。
  • 学生の創意工夫を、「形式面の創意工夫」と、「内容面の創意工夫」に分けて考えることができる。内容面の創意工夫をそれほど求めない場合に、形式面の創意工夫を求めるという方法がありえる。たとえば、「授業内容を小学生にもわかるように口語調で説明しなさい」、「正義とは何かについて対話篇で論ぜよ」といった論題。
  • 内容面での創意工夫の例としては、具体例を提示しながら説明することを求めるというもの。「正義が善に先行すべきと考えられる具体的事例を、テキストに載っている事例以外で挙げよ。なぜ優先されるべきなのか理由も述べよ」。
  • レポートを執筆する際のプロセスについての記述をもとめるという方法。「正義とは何か説明しなさい。その際、どのような文献をなぜ調べたのかなど、レポート執筆のプロセスも含めて書きなさい」。
  • レポートを評価する際のルーブリックの活用。

 

  • 自分の授業を振り返ってみると、わりと資料は詳しく作っていることが多いので、その素材をいかにそのまま流用できないようなレポート論題をつくるか、ということはもっと考えるべきでしょう。論題の設定としては、どちらかというと内容面での創意工夫をどう求めるかという方に頭を悩ませていたことが多く、形式面での創意工夫についてはもっと取り入れてみたいと思いました。

Brigitte Le Roux & Henry Rouanet(2010=2021)『多重対応分析』

 

 

  • Sageの緑のシリーズから翻訳されたものになっています。
  • 訳注がかなり詳しく、翻訳する際の工夫、関連する概念、日本語の関連書籍などが紹介されていて勉強になりました。ただし、「原文の○○という語に対して△△という訳語あてた」ということも逐一訳注にするのは若干くどく感じられ、本文中にカッコ書きで補足するというような形の方が読みやすいように思いました。
  • 幾何学的データ解析」として多重対応分析を位置づけ、線形代数に基づいて基礎的な部分がかなり詳しく書かれています。「データ解析は,きちんと数理的に定式化すれば,結局のところ,固有ベクトルを求めるだけである.データ解析に関するすべての科学や手法は,対角化すべき行列を見つけることにすぎない」(p.2)。
  • 現実のデータを使用した例も豊富で、第何次元まで解釈すべきか、ある軸におけるグループごとの平均点の差はどれくらいであれば「注目すべき差」とみなすべきか、など実践的なアドバイスも見られます。
  • 基本的には多重対応分析を記述的手法(標本の大きさに依存しない)として位置づけつつも、5章では統計的推測へと拡張されます。実際の論文を見ても多重対応分析で何らかの検定を行うというのはあまり知らなかったのですが、著者としては幾何学的なデータ解析においても統計的推測を積極的に用いていくべきという考えのようです。