溝上慎一(2014)『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』
- アクティブラーニングに関する基本理論を一通り学びたいと思い、手に取りました。溝上先生は単に授業の設計・戦略という観点からではなく、情報社会化による知識の質の変化、高等教育の大衆化にともなう学校から職業へのトランジションの変容といった観点から、アクティブラーニングの必要性を説く立場なので、教育社会学的にも興味深いと思います。
- 溝上先生は一昨年に京大から桐蔭学園に異動しており、大学教育を改革して成果を挙げることへの限界を感じたことが理由の一つのようです。
- 大学教育・大学改革に関する別の本を今読んでいるのですが、溝上先生のように特定の組織に縛られることなく、流動的にスキルを活かしていくことが、今後の日本の研究者にも求められることなのかもしれないと思いました。
- 本書におけるアクティブラーニングの定義(p.7)
一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習とのこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。
- アクティブラーニングの2つの構図:受動的学習を乗り越えるという意味でのアクティブラーニングを推進する構図から、単に受動的学習を乗り越えた先の「アクティブ」のポイントをもっと積極的に特定しようとする構図への移行が生じている
- アクティブラーニングによって講義がなくなるわけではない
- アクティブラーニング型授業の技法例:ピアインストラクション、LTD話し合い学習法、Problem-based Learning
- アクティブラーニング型授業の質を高めるための工夫:コンセントマップを用いた評価、授業外時間をチェックする、逆向き設計(backward design)、反転授業(flipped classroom/inverted classroom)