- どうも自分はマルチタスクが苦手で、つまり目の前の作業にかかりきりになってしまうことがよくあるので、授業準備と大学関係業務と研究を並行してどう進めていくのかという点で、まだまだ課題を感じます。
- これも授業に関連して買った本ですが、定期的なインプットを続けられるようにしていきたいですね。
- 原題のWhistling Vivaldiとは、ニューヨーク・タイムズのコラムニストであったブレント・ステープルズという人が若い頃に、道を歩いている時に自分が黒人男性であるということで脅威を持たれないように、ヴィヴァルディの曲を口笛で吹き、自分は高尚な白人文化を持っているように振る舞うことで、周囲の人々の緊張が解けていくのを感じたというエピソードに基づいているようです。
- 人をある種の固定観念に基づいて見るときの鋳型である「ステレオタイプ」について、あるステレオタイプに自分が晒されるのではないかという「ステレオタイプ脅威」が人々の様々なパフォーマンスに影響するという社会心理学の実験結果をまとめたものになっています。
- このステレオタイプ脅威とは、ある社会的アイデンティティを持つ人々が自らの望むことを実現する上で対処しなければならない状況という、「アイデンティティ付随条件」の1つとして捉えられ、これによってテストの成績の男女差や人種間の社会的分断をも説明する要因であるという主張されます。ただし、ステレオタイプ脅威とは状況依存的で、人々がステレオタイプ脅威を気にしなくてもよい状況を人為的に作り出すことで、パフォーマンスへのネガティヴな影響も抑えられるという証拠や、そこからのインプリケーションも示されます。
- 様々な実験研究に関して、著者自身がどのような批判を受けてきたかなど、対立仮説を丁寧に退けていくプロセスが記述されており、非専門家を念頭に置いて書かれた本でありつつも、社会心理学の研究デザインについていろいろと学べる構成になっていました。
雑多なメモ
- 黒人学生は、SATの成績が同レベルの白人学生に比べて、大学での成績が振るわないという事実
- 数学のテストが始まる前に、「これから受けてもらうテストでは、女性の成績はいつも男性と同じです」という説明をくわえたグループでは、女子学生の点数は基礎学力が同程度の男子学生と差がなくなった
- 自分が所属する集団に関するネガティヴなステレオタイプを追認するリスクがなくなることで、成績不振が消えた
- ステレオタイプ脅威は、差別などの悪意が存在しなくても生じる可能性がある
- 付随条件(contingencies)とは、行動主義心理学に由来する条件で随伴性とも呼ばれる→ある行動がどのように評価されるかが、その環境にいる人々の行動を規定するようになるという考え方
- アイデンティティと関連する行動や結果を変えたいなら、そのアイデンティティの内的兆候を変えるのではなく、その内的兆候が適応している環境を変えることに力を注ぐべきである
- 「アフリカ系アメリカ人の政治学」の授業に出席する白人学生の心理状態に見られるように、ステレオタイプ脅威は状況次第で誰でも経験しうるものである。