「ハウス・オブ・グッチ」
- チネ・ラヴィータで観てきました。映画館で映画を観たのは、1年半前くらいに「なぜ君は総理大臣になれないのか」以来でした。
- ファッションブランドとして有名なグッチの一族における権力争いを描いたもので、実話に基づいた映画です。『グラディエーター』などで知られるリドリー・スコットが監督で、レディー・ガガが主演です。同じく主演のアダム・ドライバーはスター・ウォーズで有名とのことですが、私は詳しくないので知りませんでした。
- 上映時間が158分と短くはないのですが、描かれている情報の量が多く、ところどころ展開が急な印象を受けました。パトリツィアが野心を抱き、占い師にハマるようになったあたりのきっかけがもう少しあってもよかったのではないかと思います。
- 午前中に3回目のワクチン接種をしたせいか、映画の後半はちょっと体がだるくて集中力が落ちていました。しかし史実がとにかく強烈なので、全体として退屈することはなかったです。特にファッションショーのシーンは、圧巻でした。
- 80~90年代のイタリア・アメリカが舞台ということで、トスカーナ地方の牧歌的なシーンなどもよかったです。みんな人前で遠慮なくタバコを吸っているのは、隔世の感があります。日本のバブリーな雰囲気も現れていました。
- 実際にはどうだったのかわかりませんが、マウリツィオが家族愛に揺れて躊躇するといった描き方ではく、非常にドライな対応を見せたところも印象的です。
- エンドロールで、"covid facilitator"みたいなスタッフの表示があったのですが、大量の人が出てくるシーンもあるので、コロナ禍での撮影は大変だったようです。
Giesselmann and Schmidt-Catran(2020)「固定効果回帰モデルにおける交互作用」
Giesselmann, Marco, and Alexander W. Schmidt-Catran. 2020. "Interactions in Fixed Effects Regression Models." Sociological Methods and Research: doi.org/10.1177/0049124120914934.
- パネルデータにおいて2つの独立変数(x,z)のどちらも時間可変である場合に、それらの交互作用を含んだモデルに対して固定効果推定を行うと係数にはバイアスが生じる。
- これは、xとzの交互作用に対して個人レベル平均(unit-specific mean)の差分をとってwithin推定を行おうとしても、betweenの情報も含まれるため。
- そのため、もし交互作用に用いる独立変数xとzのどちらかが観察されず、かつ時間不変の変数と相関している場合に、その影響を排除できない。
- このような場合に、xとzからそれぞれ個人レベル平均値を引いてそれらの交互作用を作り、さらにこの交互作用の平均値を引くことで(double demeaing)、厳密なwithin推定を行うことが可能になる。
- ただし、この方法は通常の固定効果推定にくらべて交互作用に関してもwithinの情報しか用いないために、有効性(efficiency)の面では劣る。固定効果推定にくらべて標準誤差が2倍以上となるケースが多い。さらに、T<3である場合には推定ができない。
- 固定効果推定か、double-demeaned推定のどちらを行うべきかは、一般的なバイアスと分散のトレードオフの問題と関連する。
- データが不十分な場合、理論的に片方の独立変数が及ぼす調節効果(moderatign effect)がunit-specificであると仮定できる場合には、片方の独立変数については個人レベルの平均値をとって交互作用を作成し、固定効果推定を行うという方法もある。
チャディー・メン・タン(2014=2016)『サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』
瞑想を多くの人にやってもらえるようにするには、科学の一分野にする必要がある。医学が科学の一分野になったのと同じだ。瞑想同様、医療は大昔から実践されてきたが、19世紀以降(パストゥールが微生物を調べて以来だろうか)、科学の一分野となってからは一変した。一番重要な変化は、アクセスだったのではないかと私は思う。医療は科学的になったとき、神秘的な要素がごっそり取り除かれた。新しい道具や設備、方法が使えるようになり、医療サービスの提供者の訓練と資格が大幅に改善した。つまり、前よりずっと多くの人が良い医療にアクセスできるようになったのだ。瞑想についても同じことが起こるのを私は目にしたい。
(Kindle版 3914-20)
- Googleの元エンジニアが瞑想を科学にすることを目指して、組んだカリキュラムが本書のタイトルである「サーチ・インサイド・ユアセルフ」というもので、2007年以来Googleの中で教えられているとのことです。
- マインドフルネスや坐禅に関する本はいくつか読み、自分でも瞑想アプリを使って実践してみています。本書の記述も実感を持って理解できる箇所がそれなりに多かったです。
- 特に面白かったのは、注意とメタ注意の区別でしょうか。メタ注意とは、自分の注意がそれたことを知る能力で、注意だけでなくメタ注意も鍛えるのが瞑想の実践とのことです。心を基本設定(デフォルト)に保つというのは、別の本でも書かれていたのを覚えていましたが(そちらではニュートラルとしていました)、メタ注意という言葉を導入するのは、自分にとって新しい発見でした。
Schunck (2016)「マルチレベルモデルにおけるクラスターの大きさと集計されたレベル2の変数」
Schunck, Reinhard. 2016. "Cluster Size and Aggregated Level 2 Variables in Multilevel Models: A Cautionary Note." Methods, Data, Analyses 10(1): 97-108.
- マルチレベルモデルにおいて、それぞれのクラスターのサンプルサイズが大きくない(レベル1のsparseness)という問題。
- 既存研究は、レベル1のsparsenessはパラメータの推定値に大きなバイアスをもたらさず、むしろクラスターの数(レベル2のサンプルサイズ)が重要であると指摘してきた。しかし、既存研究はレベル2の変数がレベル1の変数を集計して作成されている場合に、レベル1のサンプルサイズがどのように影響するかを十分に検討してこなかった。
- シミュレーションの結果、レベル1がsparseである場合に、レベル1の平均値として作成したレベル2の変数には、大きな下方バイアスがかかることがわかった。このバイアスはレベル2のサンプルサイズが大きくなってもそれほど改善しない。
- 集計された変数の信頼性はクラスターの大きさに依存する。レベル1がsparseである場合に、レベル1の変数を集計して作られたレベル2の変数には大きな測定誤差が伴う。線形回帰分析において、独立変数の誤差が係数の減衰(attenuation)バイアスをもたらすのはよく知られた事実である。
橋爪大三郎・中田考(2021)『中国共産党帝国とウイグル』
習近平政権になってから、ウイグル人に対する締め付けが一段と強まった。アメリカ政府によれば、「ジェノサイド」(民族大虐殺)である。世界の非難が集まっている。けれども、習近平政権は意に介する様子がない。
これには、はっきりした意図がある。人権を蹂躙し、人命を犠牲にし、これだけのことをやるからには、よほど大きな目的や意図があると考えなければならない。ウイグル問題を手がかりに、習近平の頭の中身を、合理的に読み解かなければならない。
[Kindle版 36-8]
- 橋爪先生は中国語が堪能であり、配偶者が中国人という話は知っていましたが、中国共産党による人権侵害に対してかなり批判的な姿勢をとっているというのは、本書で初めて知りました。ただし、頭ごなしに否定するのではなく、「合理的に読み解く」べきというのが、ふだん中国の政治・外交関連のニュースに触れている時にはあまり考えたことがありませんでした。
中田 今のお話を伺っていて、これはキリスト教の在り方に似ているという感じがしました。つまり、国家と教会の関係ですね。橋爪先生も先ほどおっしゃったとおり、今の共産党は教会に近いものであるということ。共産党も教会も任意組織であり、それらは地上の権力を持っていて、人びとを指導すると。共産党は任意団体でありながら二重権力である政府も指導しているわけですね。
しかし、西洋のほうでは政教分離をするという発想が、宗教権力を肥大化させないための解毒装置になっていると思うんですが、共産党は自分たちのイデオロギーが宗教であるとは認めないので、それと逆行していて、どんどん国家と党が一体化している方向に進んでいると思いますし、それが問題になっている。
[Kindle版 1518-25]