Brigitte Le Roux & Henry Rouanet(2010=2021)『多重対応分析』

多重対応分析 作者:Brigitte Le Roux,Henry Rouanet オーム社 Amazon Sageの緑のシリーズから翻訳されたものになっています。 訳注がかなり詳しく、翻訳する際の工夫、関連する概念、日本語の関連書籍などが紹介されていて勉強になりました。ただし、「原文…

マイケル・サンデル(2020=2021)『実力も運のうち――能力主義は正義か?』

実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル サンデル 早川書房 Amazon 途中まで原書で読んで止まっていたのですが、残りを訳書で読み終わりました。 原題は、The Tyranny of Merit: What's Become of the Common Good? なので、かなり思い切った訳で…

Möhring(2021)「国家間分析におけるマルチレベルモデルの代用としての固定効果アプローチ」

Möhring, Katja. 2021. "The Fixed Effects Approach as Alternative to Multilevel Models for Cross-national Analyses." SocArXiv. February 22. doi:10.31235/osf.io/3xw7v. パネルデータ分析の場合とくらべて、国家間のクロスセクション分析においては…

Edelman et al.(2020)「計算社会科学と社会学」

Edelman, Achim et al. 2020. "Computational Social Science and Sociology." Annual Review of Sociology 46: 61-81. 計算社会科学とはもともと、エージェント・ベースト・モデル、あるいは仮想的な集団において人間行動をシミュレーションするためにコン…

DiMaggio(2015)「計算的テキスト分析を社会科学に順応させる(あるいはその逆)」

DiMaggio, Paul. 2015. "Adapting Computational Text Analysis to Social Science (and vice versa)." Big Data and Society 2(2): 1-5. 計算的テキスト分析(computational text analysis)の領域における社会学者とコンピューター科学者の違い 第1の違い…

Bürkner(2017)「brms――Stanを使用したベイジアン・マルチレベルモデルのためのRパッケージ」

Bürkner, Paul-Christian. 2017. "brms: An R Package for Bayesian Multilevel Models Using Stan." Journal of Statistical Software. 80(1): 1-27. 扱える事前分布の種類やモデリングのオプションが非常に多いのは圧倒されそうになりますが、基本的な使い…

Rでパイプ演算子を使用してクロス集計

Rでなるべくtidyverseパッケージ(とのその関連)で統一してデータ分析をすることを考えたときに、クロス集計のやり方として、下のようなspread関数を使用する方法を比較的よく見ます(行方向に比率を集計)。 library(tidyverse) data(mtcars) mtcars %>% g…

宇野重規(2020)『民主主義とは何か』

民主主義とは何か (講談社現代新書) 作者:宇野重規 発売日: 2020/10/21 メディア: Kindle版 発売後わりとすぐに買っていたのですが、半分くらい読んで止まっていました。ここ2,3日で残りを読了しました。 『保守主義とは何か』では、エドマンド・バークが参…

Halford and Savage(2017)「ビッグデータと社会学的に対話する――交響的社会科学とビッグデータ研究の未来」

Halford, Susan and Mike Savage. 2017. "Speaking Sociologically with Big Data: Symphonic Social Science and the Future for Big Data Research." Sociology 51(6): 1132-48. 「ビッグデータ」とはもともと、従来のコンピュータの保管・分析能力を超え…

Molina and Garip(2019)「社会学のための機械学習」

Molina, Mario and Filiz Garip. 2019. "Machine Learning for Sociology." Annual Review of Sociology 45: 27-45. 面白かったところを中心に。機械学習は主に予測を目的にした方法ということで、因果推論とは対立する部分が多いと思っていたのですが、母集…

「なぜ君は総理大臣になれないのか」

http://www.nazekimi.com/ 自宅近くの映画館(徒歩圏内)で公開が本日までだったので観てきました。小川淳也議員に対して17年間という長期に渡った取材に基づくドキュメンタリーです。最近ほとんど職場以外には外出していなかったのですが、入り口での検温、…

科研費による学会の年会費支払い

以前の所属先では、個人研究費による学会の年会費支払いができたので、新しい勤務先でそれが可能か事務の方に質問したところ、「個人研究費ではできませんが、科研費からはできます」と言われて、思わず「えっ!?」と驚きました。 学会の年会費は特に研究課…

データに強くなる

マクロデータを扱っていると、G先生の授業に出ていた時のことをしばしば思い出します。 G先生の授業スタイルとして、「今日本に失業者って何人いるの?」、「失業者と無業者の違いは?」、「毎月勤労統計調査と労働力調査が示す労働時間は同じ?」といったこ…

単数名詞としてのdata

英文記事の見出しで、"data shows ..."となっており、「あれ、dataはdatumの複数形だからshowsとなるのではおかしいのでは?」と思いました。 調べてみたところ、dataを単数扱いするのはだんだんと受け入れられているとのことでした。他にも、agendaはもとも…

クロード・スティール(2010=2020)『ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』

ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか 作者:クロード・スティール 発売日: 2020/04/06 メディア: 単行本 どうも自分はマルチタスクが苦手で、つまり目の前の作業にかかりきりになってしまうことがよくあ…

ハドリー・ウィッカム&ギャレット・グロールマンド(2017=2017)『Rではじめるデータサイエンス』

Rではじめるデータサイエンス 作者:Hadley Wickham,Garrett Grolemund 発売日: 2017/10/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 以前にも一度読んだのですが、あらためて一通り動かして、ようやくある程度は使えるようになってきました。dplyrでパイプ演算子を…

2020年4月6日

勤務先の大学、院生の授業料免除申請書類に指導教員のコメントとサインが必要なのですね。書くこと自体はやぶさかではないのですが、正直なところあまり意味があるのかなあ(審査にどの程度使われているのか)と思ってしまいました。しかし、他に「学業成績…

苅谷剛彦・吉見俊哉(2020)『大学はもう死んでいる?――トップユニバーシティーからの問題提起』

大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起 (集英社新書) 作者:苅谷 剛彦,吉見 俊哉 発売日: 2020/01/17 メディア: 新書 吉見先生が『「文系学部廃止」の衝撃』や、『トランプのアメリカに住む』で人文系の知がどのような意味で役に立つの…

マイケル・サンデル(2006=2011)『公共哲学――政治における道徳を考える』

公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫) 作者:マイケル・サンデル 発売日: 2011/06/10 メディア: 文庫 この前読んでいた本で、リベラリズムがその原理を徹底させるならば、同性婚のみならず、複婚(一夫多妻制・一妻多夫制)も認めなければいけ…

溝上慎一(2014)『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換 作者:溝上 慎一 発売日: 2014/10/01 メディア: 単行本 アクティブラーニングに関する基本理論を一通り学びたいと思い、手に取りました。溝上先生は単に授業の設計・戦略という観点からではなく、情報社会化…

偏見とは(オックスフォード社会学事典・第3版)

A Dictionary of Sociology(Oxford University Press, third edition)による、prejudice(pp. 518-9)の拙訳 偏見とは通常、人や物に対してあらかじめ持たれた好意的・敵対的な意見、あるいは先入観(bias)を意味する。先入観とは否定的なものだけではな…

Abbott(1997)「曖昧の7つの型」

Abbott, Andrew A. 1997. "Seven Types of Ambiguity." Theory and Society 26(2): 357-99. 研究会で読んだやつです。ある種のメタ分析として社会学とでは先駆的な事例に位置づけられそうですが、通常メタ分析がメタレベルでの何らかの客観的な結果を得よう…

芦田宏直(2019)『シラバス論――大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について』

シラバス論:大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について 作者:芦田宏直 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/12/09 メディア: 単行本 生協で平積みになっていて面白そうだったので買ってみました。著者の先生が以前からブログに書きためてきた…

2020年2月15日

引越し先の物件にて、水道料金の引き落としに指定されているのが地銀の口座のみで、少々キレそうになりますね。 新年度の前に「学生へのメッセージ」のような書類を準備する必要があり、大した分量でもないし、大したことは別に求められてもいないとは思うの…

Watson(2014)「継続中の縦断サンプルを追加サンプルと統合する上でのウェイト付け方法の評価」

Watson, Nicole. 2014. "Evaluation of Weighting Methods to Integrate a Top-up Sample with an Ongoing Longitudinal Sample." Survey Research Methods 8(3): 195-208. パネルデータにおいてtop-upサンプルないしはrefreshサンプルが追加された際に、元…

Link and Phelan(2001)「スティグマを概念化する」

Link, Bruce G. and Jo C. Phelan. 2001. "Conceptualizing Stigma." Annual Review of Sociology 27: 363-85. 授業の準備に。来年度は自分の専門からやや外れる授業を持つ必要があるのですが、この論文のフレームワークに従いつつ、関連する概念や事例を押…

Evans et al.(2018)多元的な社会的アイデンティティーの交差点に位置する健康の不平等をモデル化するためのマルチレベル・アプローチ

Evans, Clare R. et al. 2018. "A Multilevel Approach to Modeling Health Inequalities at the Intersection of Multiple Social Identities." Social Science and Medicine 203: 64-73. 階層ベイズモデルに以前から関心がありつつも、具体的に自分で適用…

Lynch and Bartlett(2019)「社会学におけるベイズ統計――過去・現在・未来」

Lynch, Scott M. and Bryce Bartlett. 2019. "Bayesian Statistics in Sociology: Past, Present, and Future." Annual Review of Sociology 45: 47-68. 過去40年間において、ベイズ統計を用いた論文の比率が社会科学分野ごとに示されているのですが、社会学…

山岸(1992)「マイクロ・マクロ社会心理学の一つの方向」

山岸俊男,1992,「マイクロ・マクロ社会心理学の一つの方向」『実験社会心理学研究』32(2): 106-14. 授業のネタ探しのために、Mertonの理論について調べていたところ、この論文にあたりました。 マイクロ―マクロのつながりを考慮する必要があるのは、社会現…

Swift(2003)「機会を捉える――社会的非移動に対する選好とアスピレーションの影響」

Swift, Adam. 2003. "Seizing the Opportunity: The Influence of Preferences and Aspirations on Social Immobility." New Economy 10(4): 208-12. 同じ著者の論文を、前にも1本まとめました。神島先生の政治哲学の本でも、本論文の著者の議論が紹介されて…